お客様へ誠実に向き合う新しいスキンケアブランド「One st.」 ~消費者目線を大切にするホーユーならではの挑戦に迫る~
2025.08.05
ホーユーの新規事業創出プログラム『コノユビトマレ』から誕生したスキンケアブランド「One st.」。このブランドを立ち上げた堀江俊貴さんに、開発の背景や想い、そして今後の展望について詳しく話を聞きました。
新規事業創出プログラム『コノユビトマレ』とは?
新規事業創出を目的とした社内ベンチャー制度です。社員が手上げ式で事業案を会社に提案し、優秀なアイデアに対して会社が支援していきます。(2023年~2025年の3期で実施)
プロフィール
研究者の視点で見つめ直したスキンケア
——ヘアケア商品の研究開発を手がけてきた堀江さんが、スキンケア商品を開発するようになったきっかけについて教えてください。
大きなきっかけは、自分自身のスキンケア体験です。基礎化粧品のいちユーザーとして日々スキンケアを行う中で、成分や価格の観点から「本当に使いたい」と思える商品になかなか出会えないことが、長年にわたって悩みの種でした。
そんな中、当社の研究職には、「プレテーマ」と呼ばれる自由な研究テーマに取り組める制度があり、私は約5年前から「自分が心から使いたいと思えるスキンケア」の試作を始めました。
さらに、日用品や医薬品、食品を扱う「クラシエ株式会社」がグループとなったことも大きな転機となりました。2021年にはクラシエの研究所でスキンケアに関する知見を学ぶ機会があり、製品開発におけるスピード感や考え方について多くの刺激を受けました。
こうした経験と研究成果を踏まえ、2024年7月にスキンケアブランド「One st.」のクラウドファンディングを実施。
社内外の多くの方々から温かいご支援をいただき、同年10月にはブランドを立ち上げることができました。おかげさまで、現在では多くのお客様にご支持いただけるブランドに成長しています。
——改めて、現在は美容液とハンドクリームを展開している「One st.」のコンセプトと、他社商品との違いについて教えてください。
「One st.」のコンセプトは、「スキンケア迷子を救うこと」です。私自身、もともとは一人の消費者としてスキンケアに関心を持ち、さまざまな商品を試してきた経験があります。
そうした中で、「この成分にはどんな働きがあるのか」「なぜ商品ごとに価格差があるのか」といった疑問を抱くことが多くありました。
スキンケアブランドを展開する現在は、当時感じていたそうした素朴な疑問に、きちんと向き合える商品をつくりたいと考えています。
スキンケアは情報も選択肢も多い分野であり、ご自身に合った商品を見つけるのが難しいと感じる方も少なくありません。
「One st.」は、そんな方々の選択をサポートできるような、信頼されるブランドを目指しています。
そうした想いを具体的な商品づくりに落とし込むために、「One st.」では3つの約束を掲げています。
1つ目は、「真に必要な成分だけを配合し、広告訴求に偏らない商品設計を行うこと」。成分表示を見ると多くの成分が記載されていますが、実際に肌にとって意味のある成分は限られています。「One st.」では、シンプルでわかりやすい処方を心がけています。
2つ目は、「成分の配合量を可能な限り開示すること」。配合成分の内容だけでなく、その量も肌に影響する重要な要素です。 One st.の美容液はすべての配合量を0.01%単位でホームページに開示し、透明性を徹底しています。
3つ目は、「製品の原価に応じた独自の価格設定」です。スキンケア商品は継続して使い続けることが大切だからこそ、「続けやすさ」を重視した価格設定を心がけています。そのため、広告費は必要最小限にとどめ、商品製品の中身にコストを集中させるスタイルを採用しています。納得できる価格で、確かな品質を実感していただける商品を目指しています。
——美容液の成分や処方について、具体的な特徴を教えてください。
One st.の主成分として採用しているのが、ナイアシンアミドです。ナイアシンアミドとは、ビタミンB 3のこと。私自身が最も信頼している成分のひとつです。
スキンケアにおいて、私はビタミンA・B・Cをバランスよく取り入れる「ABCメソッド」という考え方をYouTubeなどで提案しています。
One st.の開発では、その中でも特にビタミンBであるナイアシンアミドに着目し、美容液の中心成分として据えました。
ナイアシンアミドを選んだ理由は、高い汎用性と安全性の両立にあります。
たとえば、近年注目を集めている「ビタミンA(レチノール)」は、高い効果が期待できる一方で、赤みや皮むけといった「レチノイド反応」が起こる可能性があり、妊娠中の方には使用が推奨されないなどの注意点もあります。
その点、ナイアシンアミドは刺激が少なく、シワ・シミ・色むら・くすみ・乾燥・ニキビといった幅広い肌悩みにアプローチできる成分 として、日々のケアに取り入れやすい点が魅力です。
One st.では、このナイアシンアミドを18.5%という高濃度で配合。さらに、美容液のベースには水ではなくガラクトミセス培養液を採用し、無駄のない処方設計を実現しました。
——香りについても、こだわりがあるそうですね。
顔につけるアイテムだからこそ、香りの印象は非常に重要だと考えています。One st.では、香料の配合量にも細心の注意を払い、“強すぎず、心地よい”絶妙な香りのバランスを追求しました。
お客様への“誠実さ”を大切にしたい。
ホーユーでOne st.を立ち上げた理由とは
——なぜホーユーでスキンケア事業を立ち上げようと思ったのでしょうか?
One st.が最も大切にしているのは、消費者に対する誠実な姿勢です。そして、私がホーユーという会社に強く共感しているのも、その“誠実さ”にあります。
ホーユーは、長年にわたって消費者と真摯に向き合い続けてきた企業であり、その姿勢は私の考えとも重なります。
だからこそ、この会社でスキンケア事業を立ち上げ、育てていくことが最も自然で意義のある選択だと感じ、ホーユーの新規事業創出プログラム『コノユビトマレ』に応募することを決めたのです。
——製品開発からブランド立ち上げまでの過程で、大変だったことはありますか?
最も大変だったのは、安全性の確認です。ホーユーは、何よりも消費者の安心・安全を大切にする企業です。
そのため、高濃度の美容成分を配合した新しいスキンケア商品を開発するにあたり、徹底した安全性の検証が求められました。
社内では皮膚科の専門医を招いて成分評価を行い、さらに数十名の研究員に商品を試用してもらいながら、肌状態の変化を細かくチェックするなど、非常に厳しいプロセスを踏みました。
この検証には半年ほどの時間を要しましたが、すべての基準をしっかりとクリアすることができました。
ナイアシンアミドを高濃度で配合しながら、ホーユーならではの厳格な安全基準を満たしていることは、「One st.」の大きな強みだと考えています。安全性の検証プロセスは大変ではありましたが、お客様に安心してお使いいただける商品に仕上がっているという点は自信をもってお伝えできます。
——現在、事業運営の面ではコーポレート本部 経営企画室 経営企画課の福本さんと共に取り組まれていると伺いました。福本さんは事業運営においてどのような存在でしょうか?
福本さんとは、社内に新規事業創出プログラムが立ち上がる以前からお話をする機会がありました。
当時、社内でこのプログラムを構想されていた段階で、私は「スキンケア分野で、消費者に誠実に向き合う商品を届けたい」という想いを共有し、「社員がアイデアをかたちにできる仕組みができたら、ぜひ挑戦したい」と福本さんにお伝えしていました。
こうした経緯から、福本さんは私のビジョンや価値観を深く理解してくださっており、「One st.」の立ち上げにあたっても、意思決定や調整を非常にスムーズに進めることができました。事業運営において、心強いパートナーのような存在です。
現在は、私がSNS発信や商品開発に注力する一方で、数や売上の管理、お客様対応、物流関連業務といった面を福本さんに幅広くご支援いただいています。
今のユーザー数規模では、私ひとりで全てを担うのは現実的ではなく、福本さんの支えがあってこそ、事業の安定運営が成り立っていると実感しています。
お客様の声が大きな励みに
信頼の連鎖を生み出すブランドを目指して
——One st.は、お客様からの口コミ評価などが非常に高いですよね。堀江さんはこうした反響について、どのように感じていますか?
2025年7月時点でサイトに寄せられたレビュー数は800件以上で、レビュー評価は平均4.8となっています。
正直なところ、ここまで多くの方が熱意のこもった感想を寄せてくださるとは思っていませんでした。当初は数件でも評価をいただければ十分うれしいと思っていたのですが、皆さまから寄せられる長文のレビューはどれも心に響くものばかりで、すべて目を通しながら、大きな励みをいただいています。
中でも特に印象に残っているのは、「One st.を使い始めて自分に自信が持てるようになった」というお声です。
また、お母様が美容液を使用されていて、その良さを思春期のお子様にすすめたところ、親子で効果を実感していただけたというご報告もありました。
商品のリピート率もおかげさまでおよそ7割となっており、幅広い世代の方々の役に立てていることを実感するたびに、この商品を開発して本当に良かったと感じます。将来的には、「One st.」が日本中のご家庭に自然と置かれているような、そんな存在になっていけたらと思っています。
——お客様との相談会も開催されているとお聞きしました。
東京、名古屋、大阪で10回以上開催し 、今後再び東京でも開催を予定しています。
One st.が消費者を中心に考えているブランドなので、ユーザーさんの声を直接聞くことが一番大事だと思っています。
実際にお話しした方々は、本当に熱量が高く、レビューで見るような「このブランドに出会えてよかった」「周りの友達にもぜひおすすめしたい」という想いを直接伺うことができます。作ってよかったという気持ちと同時に、もっと広げていかなければならないというプレッシャーも感じますね。
お客様との相談会では、ハンドクリームのお試しやフレグランスの人気投票なども実施
小学生からご年配の方まで、幅広い層のお客様にお越しいただきました
——今後のブランド展開について、どのような展望をお持ちですか?
One st.はこれからも誠実さを大切にしながら、世の中に自然と広がっていくようなブランドになっていきたいと考えています。
広告で一気に知名度を拡大するのではなく、商品を実際に使って「これは本当に良かった」と感じた方が、ご家族やご友人にすすめたくなる——そんな信頼の連鎖を生み出すことが理想です。
無理に成長を急ぐのではなく、ゆっくりでも着実に、そして長く愛されるブランドへと育てていきたい。
そうした成長のかたちは、ホーユーという誠実な企業だからこそ実現できると信じています。最終的には、「One st.が一家に一本ある」のが当たり前と思っていただけるような存在になることが、私たちの願いです。
現在は 、ナイアシンアミド配合の美容液とハンドクリームを展開していますが、今後はYouTubeでもご紹介している「ABCメソッド」に沿って、ビタミンA(レチノール)やビタミンC、セラミドなどを活用した商品や、クレンジング・日焼け止め下地など、毎日のケアに役立つラインアップを拡充したいという構想はあります。
性別問わず使いやすい処方や、香りへのこだわりを活かしたフレグランスなども視野に入れ、お客さまの日常に寄り添う存在を目指して丁寧に展開してまいります。
新規事業を支える伴走者の視点
福本雄さん(コーポレート本部経営企画室)に聞く
堀江さんと二人三脚でOne st.事業を支えてきた福本さんに、新規事業支援の視点から話を聞きました。
——One st.の支援において、特に意識していたことは何ですか?
堀江さんの想いや価値観を尊重しつつ、リスク管理や社内統制とのバランスを取ることに注力してきました。
新規事業は正解のない挑戦です。そのため、起案者の「こうありたい」「これを実現したい」という想いを何より大切にしてきました。
とはいえ、企業として展開する以上、法令順守やリスクヘッジも欠かせません。その中で、できる限りビジョンを実現できるよう支援してきたつもりです。
——これまでの支援の中で印象に残っている点、評価している点はありますか?
評価というより感じた魅力として、堀江さんの「お客さまの共感を得る力」が挙げられます。専門性を持ちながらも消費者視点を徹底しており、その姿勢が開発や発信に表れています。
また、SNS発信に加え、全国でお客さまと直接対話されている行動力も大きな強みだと思います。そうした積み重ねが、お客さまからの評価につながっていると感じています。
——ブランドの今後に対して、期待することがあればお聞かせください。
「One st.」は誠実さを軸に、ユーザーの気持ちに寄り添うブランドとして広がりつつあります。今後もその想いを大切にしながら、国内外に価値を届ける存在へ成長していってほしいです。
さらに将来的には、築かれたビジネスモデルや哲学を他の領域へと展開し、ホーユー全体の成長にもつながっていくことを期待しています。
あとがき
堀江さんが消費者として感じた課題感と、「消費者に対する誠実性を大切にしたい」という想い、ホーユーの企業理念が重なり合うことで、非常に透明性の高い魅力的なブランドが生まれていると感じました。今後の展開が期待される中、ホーユーの新たな挑戦は続いていきます。
