ホーユーのヘアケアブランド「BYKARTE」はどう生まれた?開発の裏側

ホーユーのヘアケアブランド「BYKARTE」はどう生まれた?開発の裏側

ホーユーと言えば、ヘアカラー。その強みは、裏を返せば大きな壁でもありました。ダメージに特化したヘアケアに対して「前例がない」という言葉が立ちはだかる中で誕生したのが、ヘアケアブランド「BYKARTE(バイカルテ)」です。

「BYKARTE」は、ダメージヘアの補修に特化したサロン専売ヘアケアブランド。髪の内部成分「シスチン」を直接補給する独自の技術を採用し、傷んだ髪を補修して素髪のように仕上げます。

約4年の構想と開発期間を経て、2021年に生まれた「BYKARTE」は今、「軽いのにまとまる」というほかにはない仕上がりでサロン様とお客様に支持されるブランドへと成長を遂げました。全国でも限定したサロン様のみの取り扱いにも関わらず、SNSや口コミを通じてその輪は大きな広がりを見せています。

BYKARTE

今回、ブランドの立ち上げに携わった仲嶋友範さんと、20253月よりマーケティングを担当している瀬塚悟之さんにインタビューを実施。「BYKARTE」開発の裏側とブランドに込めた想いを聞きました。

素髪へ導く「BYKARTE」。軽やかなのにまとまる秘密

素髪へ導く「BYKARTE」。軽やかなのにまとまる秘密

―――「BYKARTE」は、どのようなヘアケアブランドなのでしょうか?


仲嶋:「BYKARTE」のコンセプトは、「素髪へ導く処方箋」です。企画の初期段階で、「理想の髪とは、どういう髪ですか?」と多くのサロン様に聞いたときに、出てきたのが「素髪」というキーワードだったんです。素髪とは、何もダメージを受けていない、まっさらな状態の髪。大人であれば、子どものころのような髪をイメージするのではないでしょうか。

そんな「素髪」に強いニーズがあることを感じ、それを実現できるような技術を社内で探してみると、「シスチン」という成分を使ったものを見つけました。シスチンは髪に含まれるアミノ酸の中で一番多い成分で、髪本来の健康的な強さ・しなやかさに影響するのですが、日常のさまざまなダメージでシスチンの結合は切れて減少してしまいます。そんなシスチンを毛髪内部までダイレクトに補充できる独自のテクノロジーが、ホーユーにはありました。

一定の条件下でないと溶けない成分であるうえに、髪に入れ込んだあとに定着させる技術も組み合わせないといけない。そんな難しい制約をクリアすることで、軽やかなのにまとまり感のある「素髪」を実現しています。

仲嶋

仲嶋:「BYKARTE」ではサロントリートメントのほかに、ホームケアアイテムも展開しています。特徴は、髪質と求める仕上がりの掛け合わせで選べることです。「軟毛」「普通毛」「くせ毛」など、髪質に合わせてシャンプーを選んだら、トリートメントでは「さらさら」「まとまり」「なめらか」という仕上がりを選べます。悩みごとにラインを変えるのではなく、掛け合わせで対応できるのは業界でも珍しい設計だと思っています。


———ブランド名「BYKARTE」に込められた想いを教えてください。


仲嶋:「髪のダメージに寄り添うブランドにしたい」と考えたとき、「カルテ」という言葉を思いつきました。髪にとってのお医者さんは美容師さんです。共通しているのは、どちらも「カルテ」を見ながら人と向き合っているということ。髪にとってのお医者さん(美容師)があなたの髪をケアしてくれる、というイメージで「あなたのためのカルテ」という意味を込めて名付けました。

開発担当者からのコメント

研究_宮崎

総合研究所製品開発第2研究室

宮崎広充さん

美容師さんの声を真摯に聞いて想いを理解し、未来につながるニーズを考察して商品に落とし込む。「BYKARTE」は、そのような経緯で「素髪へ導く処方箋」というコンセプトにたどり着きました。
「シスチン」を直接補給することで毛髪を補修するという独自のシーズは、10年以上前から検討されてきた自社技術であり、安全性と安定性という2つの大きなハードルがありましたが、試行錯誤の末に商品化にこぎつけることができました。
「BYKARTE」には開発メンバーのこだわりがたくさん詰まっています。例えば、シャンプーには天然由来の洗浄・補修成分であるPPT由来の界面活性剤をふんだんに使用しています。
コストは高いですが、社内の皆様にご尽力いただき、使用感を最優先にこだわった中身設計を実現することができました。

合言葉は「“前例がない”と言わない」

合言葉は「“前例がない”と言わない」


———「BYKARTE」はどのような経緯で誕生したのでしょうか。


仲嶋:これまでホーユーはヘアカラー剤を始め、カラーによるダメージケアや色を長持ちさせるためのシャンプーなど、あくまで“ヘアカラー”を支えることを目的とした商品展開をしてきました。一方で、ホーユーがさらに成長していくためには、ヘアカラー以外のダメージケアともしっかりと向き合う、根本的なヘアケアへの挑戦が必要だと感じていました。

そこでまず、立ちはだかったのは知識の壁です。自分自身が、ケアについてあまり詳しい知見を持っていなかったので、美容師の皆様に混ざって「シャンプーソムリエ」という資格を取ることから始めました。また、自分の髪をテスト台にするために、あえて髪を伸ばしてケアの質感を確かめたりしていましたね。

もうひとつの壁は、社内で「本当に売れるのか」という懐疑的な雰囲気があったことです。ヘアカラーしか販売の経験していないからこそ、確証がないものに対して不安を抱く人もいました。そこで、開発の過程でチームの合言葉を決めました。「“前例がない”と言わない」です。


———具体的にはどのような前例のない挑戦をしたのですか?


仲嶋:「BYKARTE」ではさまざまな挑戦をしましたが、中でも印象的なのは本格的に全国展開する前に、北海道の札幌エリアで1年間テスト販売を行ったことです。

営業は2名のみという限られた環境の中、発売3ヶ月目までは手探り状態でした。そのうちに、代理店様がファンになってくれて、家族の方が使ってくれたり、大事にしているサロン様に紹介してくれたりと、徐々に芽が出てきました。

一番の手応えを感じたのは、とあるサロン様に導入していただけたことです。どのメーカーも取引したいと思うようなサロン様で、本当にいいと思ったものしか扱わない印象があったんです。そのオーナー様からいただいたコメントが、「BYKARTEは軽いのにまとまる」でした。

本来、軽い髪はまとまりにくいはずなんですよ。でも、「BYKARTE」なら実現できる。開発前に目指していた「理想の髪」と「BYKARTE」の仕上がりが、見事に合致したと感じた瞬間でした。

瀬塚:北海道での結果を受けて、社内の雰囲気も変わっていきましたね。しっかり取り組めば、全国展開でも必ずいい結果が生まれるのでは、と感じました。

仲嶋:全国発売のタイミングで「全国でも限定したサロン様のみに導入する」と決めたのですが、これもテスト販売での学びから来ています。どんなサロン様なら「BYKARTE」をちゃんと使ってくれるのか、ある程度の基準が見えたことで、思い切って導入サロン様を絞るという判断ができるようになりました。

営業担当者からのコメント

営業_神田

プロフェッショナル販売部門西日本サロン部

神田 祐介さん

北海道で実施した「BYKARTE」先行販売は、当社として初めての取り組みであり、右も左もわからない状態からのスタートでした。
当時はコロナ禍で限られた環境の中でも、代理店様やサロン様と丁寧にコミュニケーションを重ね、実際の施術を通じてトリートメントの価値を体感していただいたことで、現場から実践的な意見や改善点を得ることができました。
先行販売で得られた経験と知見は、今の仕事の基盤となっていると感じます。
当時関わっていただいた当社スタッフ、代理店様、サロン様は、この先も特別な仲間です。

ファン作りのブランド戦略


―――「全国のサロン様の1%にしか導入しない」ことを始め、当初はどのような販売戦略があったのでしょうか。


仲嶋:嘘のない口コミを大切にすることにこだわりました。

コロナ禍ではオンラインで雑誌社の編集長やライターの方にお声がけして商品説明会を開き、サロン様で実際にサロントリートメントを体験してもらったり、人生で最も髪を美しくしたいタイミングはいつか、という発想からブライダル系とも積極的にタイアップをしたり。リアルな声を醸成していくためにコツコツとプロモーションを打っていました。

認知が広がるきっかけのひとつになったのは、有名なモデルの方が「BYKARTE」を気に入ってご使用いただいているのを知り、インスタライブをオファーしたことでした。熱量がとても高くて、カンペを見ずに「BYKARTE」の良さを熱く語ってくれたんです。それによって、ひとりのファンから新たなファンが生まれていくのを目の当たりにしました。この「ファンを大切にする」という考え方が、「BYKARTE」を成長させてくれたと思っています。

瀬塚さん

瀬塚:発売から5年が経ったいまでも、基本的なスタンスは変わらないですね。「BYKARTE」を体験できるサロン様は限られているので、導入サロン様への導線を作っていくことがプロモーションの中心になっています。Webや雑誌に広告を掲載しながら、「どこで体験できるか」をサロンマップと紐づけた年間プロモーションを継続して行っています。

はじめから美容感度の高いお客様にしっかりアプローチして信頼と安心を積み上げてきたからこそ、今そういう土台の上に立ってプロモーションができている実感があります。


―――「BYKARTE」を今後さらに進化させていくにあたって、考えていることはありますか?


瀬塚: きちんと根拠にもとづいた説明や、過剰な表現を避けるという姿勢、本質的なケアの特徴にフォーカスしたアプローチ。これらはサロン様やお客様の信用につながってきたブランディングなので、今後も変えるべきではないと思っています。それに加えて、ブランドコンセプトである「素髪へ導く処方箋」を体現し続ける“処方箋を提供できるブランド”としてのポジションをさらに強化していきたいですね。

一方で、ニーズは時代やトレンドによって変わっていきます。そうすると、私たちが開発するものも変わってくるので、今後もニーズに合わせた商品やプロモーションを考えていきたいですね。


―――2024年にはエイジング毛に特化した新ライン「AE シリーズ」も発売されましたね。


仲嶋:「BYKARTE」のターゲットは30歳前後の方を想定していたのですが、発売後にサロン様から「BYKARTEを使うとエイジング毛が収まる」という言葉をいただいたことで、開発したのがAEシリーズです。従来以上にシスチンを補充・定着しやすくすることで、エイジング特有の歪みを整え、手触りとまとまりのよさを実現しています。まさに、お客様のニーズから生まれた商品ですね。

AEシリーズ

「BYKARTE」から広がる、ポジティブな未来

「BYKARTE」から広がる、ポジティブな未来


―――「BYKARTE」のプロジェクトが成功したことで、どのような変化がありましたか? 

仲嶋:社内のさまざまなルールを打破するきっかけになりました。「BYKARTE」はシンプルな外観の中にも商品の表面の色や加工にこだわったり、デザインと使いやすさを両立するために、シャンプーのポンプを箱の中に同封したりするなど、さまざまなことを実現するために担当部署とかなり議論をしました。でもその甲斐があって、その後のヘアケアやスタイリングなどの商品もデザイン性にこだわった商品づくりができるようになったと感じています。

チームの雰囲気もすごくポジティブになりましたね。「新しいことをやっていこう」と前のめりで勢いがあります。これが社内全体に広がって、良い循環を作っていけたらいいなと思いますね。

個人としては、ブランディングの大切さを痛感しました。これまで商品のスペックや特長をしっかり伝えていくことをやってきたけれど、「BYKARTE」ではブランドをどう育てるか、育てるために何をするかに頭を悩ませながら、その過程が楽しくもありました。

それに伴って、仕組みを作ることも覚えました。「全国でも限定したサロン様のみに導入する」ルールにもどかしさを覚える人もいるかと思います。そこで、ルールを守らないと販売ができないような仕組みを作りました。「ブランドを守るために仕組みを作る」という発想は、今後の仕事にも活きる学びだと感じますね。

仲嶋さん

瀬塚:私は「BYKARTE」を担当して1年ですが、髪のコンディションを整えることがいかに大切かを実感しました。

美容師からキャリアを始め、インストラクターからヘアカラーの商品企画と、ずっとヘアカラーの世界にいたので、いかに髪色を綺麗に表現するかに重きを置いてきました。でも、ヘアデザインもヘアカラーも、髪自体が良い状態であることが最終的な仕上がりにつながってくる。ヘアカラーとヘアケアの両方を担当したことで、考え方の幅が広がりました。

瀬塚さn


―――お二人が今後取り組んでいきたいことを教えてください。


瀬塚:海外で仕事をしていた経験を商品展開やブランディングでも活かしたいですね。教育系の部門のときには台湾で美容師の皆様に向けて講師をしたり、販売推進系の部門のときにはタイで現地の人たちと一緒に戦略を考えたりと、異なる文化や価値観の中で働くことに刺激を感じていました。

今後、日本の人口が縮小していく中で、海外の人口は広がっていく。特にアジアは日本と近い髪質を持っている人が多いので可能性を感じています。国内だけに留まらない展開をビジョンとして描いています。

仲嶋: 私は営業系の部門にいたときにワクワクしていたのが、新商品の説明会でした。「どんな商品なんだろう?」といつも楽しみだったので、今度は私がそのワクワクをお客様に提供したいと思いながら商品開発をしていきたいです。

そのうえで、今後取り組んでいきたいのは企業ブランディングですね。「BYKARTE」という商品をブランド化するためにブランディングを意識してきたからこそ、企業ブランディングも非常に大切だと感じています。自分はずっとホーユーにいたいと思っているからこそ、外から見てもいい会社だと思ってもらいたい。特に、美容師の皆様を始めとするプロフェッショナルな方たちに、ホーユーの商品を誇りに思って使っていただけるようなイメージを作っていけたら、と思います。

仲嶋さん瀬塚さんの会話

あとがき

「ヘアカラーのホーユー」が挑んだ、ヘアケアの新たなスタンダード。
「BYKARTE」の開発ストーリーからは、前例のない中で「本質的なヘアケア」を追求した並々ならぬ熱意が伝わってきました。
サロン様やお客様の声を大切にしながら、一歩ずつ丁寧にブランドを育ててきた、その揺るぎない姿勢こそが、多くのファンを惹きつける理由なのだと深く実感しました。

<プロフィール>

仲嶋友範

プロフェッショナルカンパニー
マーケティング室

仲嶋友範さん

2006年入社。サロン営業を経てプロフェッショナル部門のマーケティング室に異動。ヘアカラーの商品企画を経験した後、ヘアケアの企画担当へ。「BYKARTE」の企画と同時進行で「ソマルカ」のブランドを立ち上げる。現在はヘアカラーの商品企画業務を担う。

瀬塚悟之

プロフェッショナルカンパニー
マーケティング室

瀬塚悟之さん

2011年入社。美容師を経てインストラクター活動に従事。その後、プロフェッショナル向け教育企画部門で講師職を担う。販売推進部門での現場支援を経て、マーケティング室へ異動。ヘアカラーの商品企画にて「プロステップ」を担当。現在は「BYKARTE」担当として、世界観設計から商品開発までを推進。

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