「かゆみ」発生の新たなメカニズムを発見

お知らせ

ホーユー株式会社(名古屋市東区)は富山大学大学院薬学部の倉石泰教授らとの共同研究により、皮膚におけるかゆみの新たな発生メカニズムを解明しました。

従来、かゆみを発生させるメカニズムとしてよく知られていたのは、皮膚に存在する肥満細胞の中にあるヒスタミンが何らかの刺激(化学物質など)によって肥満細胞の外へ出され、そのヒスタミンが感覚神経に作用することによるかゆみ発生メカニズムでした。しかし、今回私たちはヒト3次元培養皮膚を用いた研究によって、角化細胞(ケラチノサイト)という皮膚表面を構成する細胞群が、ラウリン酸ナトリウムという洗浄剤成分に直接さらされることで、かゆみの原因物質であるヒスタミンを産生することを発見しました。つまり、"ケラチノサイトが洗浄剤成分を感じてヒスタミンを産生する"という、新たなかゆみ発生メカニズムを明らかにしました。

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【 図1 皮膚の模式図 】

私たちの身体は、普段生活をする中で塵やホコリなどの汚れや細菌などにさらされています。このような汚れや菌などが体内へ入らないよう防いでいるのが皮膚です。皮膚は表皮と真皮から構成されています(図1)。ケラチノサイトは表皮を構成する細胞の90%以上を占めていて、体内の水分保持や外界から侵入する菌による感染のバリアとして機能している重要な細胞です。一方、肥満細胞は、表皮の下の真皮に存在しており、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を果たしています。

通常、私たちは皮膚についた汚れなどをハンドソープやシャンプーなどの洗浄剤を使って洗い流し、皮膚を清潔に保っています。しかし、身体を清潔に保つなどの生活習慣や生活環境の変化に伴い、乾燥肌や敏感肌の人が増加してきました。そんな肌トラブルをもつ人の中には洗浄剤によってかゆみを感じる方もいます。

ホーユーは今回の研究をさらに進め、乾燥肌や敏感肌などの肌トラブルを持つ人が使用してもかゆみを感じないような商品の開発や肌トラブルの根本的解決が可能なのか等の踏み込んだ研究に応用してまいります。
なお、この研究成果は、2012年3月28~31日に札幌で開催された日本薬学会第132回年会、香粧品科学・皮膚科学のシンポジウムにて発表されました。

【詳細】
<背景>
界面活性剤は、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔用洗浄剤などの皮膚洗浄剤だけでなく、食器用洗剤や衣類用洗剤などに使用されています。中でもアニオン性界面活性剤は、優れた洗浄力を発揮することから洗浄剤の主たる界面活性剤として一般的に使用されており、毎日のように皮膚に接触する機会があります。近年、生活環境や生活習慣の変化に伴い、乾燥肌や荒れ肌、敏感肌といった肌トラブルが増加しており、そのような人の中には、洗浄中や洗浄後に皮膚のかゆみを訴える方もいます。しかし、皮膚への洗浄剤の刺激がどのようなメカニズムでかゆみを生じるのかは明らかにされていませんでした。

<今回明らかにした“かゆみ発生メカニズム”>
角化細胞(ケラチノサイト:図1参照)は皮膚外層の表皮を構成する細胞の90%以上を占めています。そこで、洗浄剤に刺激されたケラチノサイトがかゆみ物質を産生している可能性がある、と考えました。今回、ホーユーは、ヒト3次元培養表皮を用いた研究から、この仮説を実験的に検証しました。ヒト3次元培養表皮とは、ケラチノサイトのみから作られたヒト表皮に類似した構造をとる実験用皮膚組織です
このヒト3次元培養表皮に、洗浄成分であるラウリン酸ナトリウムを塗布(暴露)しました。その結果、ラウリン酸ナトリウムに暴露されたケラチノサイト内では、ヒスタミン合成酵素であるL-ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の活性が亢進していることを見つけました。さらに、このHDCの活性亢進によってヒスタミンが合成され、合成されたヒスタミンがかゆみを発生させていることを突き止めました。今回の研究結果から、“ケラチノサイトが洗浄剤を感じてヒスタミンを産生する”という、新たなかゆみ発生メカニズムの存在が明らかとなりました。

<今後の展開>
ヒト3次元培養表皮は、実際の健康なヒトの皮膚と比べ細胞接着性に劣り、バリアが弱い状態にありますので、健康な皮膚に対して市販されている洗浄剤を通常使用する場合においては、直ちにかゆみが生じることはありません。しかし、今回の結果から、乾燥肌や敏感肌などの肌トラブルを持つ人では、一部の洗浄成分がかゆみの原因となると考えられます。
乾燥肌や敏感肌のような肌トラブルが増加している近年、当社では、今回明らかとなったかゆみ発生メカニズムが肌トラブルにどのように関係しているのかさらに研究を進め、肌トラブルを根本的に解決できるような商品開発に応用していきたいと考えています。

【参考】
<かゆみとは>
かゆみは「掻きたいという衝動を生じる感覚である」と一般的に定義されます。また、多くの皮膚疾患において、「かゆみ」は主要な症状の一つです。ヒトは、かゆみを感じると掻きたくなる衝動に駆られます。掻くことでかゆみは治まりますが、反面皮膚を傷つけ、時に皮膚に炎症を引き起こします。炎症が生じると、炎症部位やその周辺から炎症性サイトカインなどの化学物質が放出され、それらが原因で再びかゆみを生じることになるのです。その結果、また掻くことで皮膚炎を悪化させるという悪循環に陥るわけです。つまり、かゆみを伴う皮膚疾患では、かゆみの抑制が悪循環を断ち切る重要なポイントとなります。

<皮膚の役割と機能>
私たちの体表面を隙間なく覆っている皮膚は、表面から表皮、真皮及び皮下組織の順番で層を形成しています。皮膚の総面積は成人で平均1.6㎡に達し「最大の臓器」といわれます。皮膚の最も重要な機能は「防御機能」です。皮膚の表面は扁平化した角化細胞(ケラチノサイト)で何層も覆われており、外界からの刺激や微生物・細菌などの侵入を防ぎ、体内の水分保持や体温維持にも機能しています。
外界からのバリアとして存在する表皮は約0.2mmと極めて薄いものです。この表皮の中で防御機能の役割を担うのが角化細胞(ケラチノサイト)です。一方、真皮は線維芽細胞から産生される弾性コラーゲン性間質から構成され、皮膚の伸縮性や弾力性をもたらすとともに、毛細血管に富み、表皮との協調的作用も持っています。

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