加齢によりキューティクルの長さが21%減少
ホーユーの新技法により毛髪のキューティクル層の構造解析に成功

研究・調査

ホーユー株式会社(名古屋市東区)では、普段の生活環境の状態における毛髪のキューティクル層の構造解析を行うことに成功し、キューティクル層の形状がエイジング(加齢)とともに変化していくことを発見しました。

当社が、日本人女性110名(500本以上)の毛髪を解析した結果、エイジングによってキューティクルの形態が変化していくことが明らかになりました。具体的には20代女性と50代以上女性の毛髪を比較すると、50代以上ではキューティクル1枚あたりの長さが約21%短くなり、層の厚さも約15%減少しています。

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【図1】<20代女性の毛のキューティクル表面>    <50代以上女性の毛のキューティクル表面>

■従来の解析手法

毛髪は、下の【図2】のようにコルテックスの周りを何層ものキューティクルが覆っている構造で、毛髪表面は魚の鱗のように見えます。これまで、毛髪の構造を見るには、主に電子顕微鏡を使用していたため、「毛髪を観察するために真空状態を必要とする」、「毛髪を特別な化学物質に浸す必要がある」などの制約が多く、大量かつ正確な観測データを得ることが困難でした。

■当社の新手法

高性能のレーザー顕微鏡と、独自に開発したプログラム(キューティクル自動認識処理法)を使ったデータ解析により、従来よりも格段に速く毛髪表面の三次元的な構造を計測できるようになりました。また、特に室温や湿度を特別に設定する必要なく、普段の生活環境下での毛髪測定ができるようになりました。

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【図2】<毛髪構造の模式図とキューティクルの三次元構造>

この研究成果は、2011年4月6~8日に韓国ソウルで開催された第10回アジア化粧品技術者研究発表会(10th Scientific Conference of Asian Societies of Cosmetic Scientists)にて発表いたしました。
また、当社では、透明で着色されないと思われてきたキューティクル層にもヘアカラーの染料が染着することや、毛髪の脂質成分が染料の定着に関わっていることを既に明らかにしてきました※1。今回のキューティクル層の構造解析方法と合わせて、これらの研究成果を活かして開発した、エイジングヘアの染まりに注目したサロン向けのヘアカラー「プロマスターGクリエール」(医薬部外品)や、毛髪に脂質補給するホームケア用トリートメント「ヘアセラム」(サロンで販売)といった商品を6月1日より発売いたします。

※1 第32回および第35回日本香粧品学会にて毛髪のキューティクル層におけるヘアカラーの染毛メカニズムを発表。
   61回日本化粧品技術者会研究討論会にてその応用技術を発表。


<この件に関するお問い合わせ先>
ホーユー株式会社 社長室広報課 長田(ながた)
〒461-8650 名古屋市東区徳川一丁目501
TEL:052-935-9570  FAX:052-935-1865

【背景】

人により髪質が異なることは感覚的にもよく知られており、毛髪のキューティクルの枚数や厚さなどの基本的な微細構造についても個人差が非常に大きいことは周知のことでした。ただ、毛髪の構造を観察するためには、様々な技術的な問題もあり、多くの毛髪を観察してそれぞれの微細な部位の計測をして特徴を数値的に表し統計的にその実態を掴むことは非常に労力のいる困難な作業でした。

【実験方法】

本研究では、非接触で0.01μm(1μm=1000分の1mm)レベルの精度で三次元形状が測定できるレーザー顕微鏡を使用しました。これは、レーザーを当て、その反射位置と強度から物体の三次元形状をコンピュータで構成していくもので、すでに産業分野で用いられている装置です。

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毛髪の表面および毛髪を斜めに切った断面の様々な数値を測定し、独自に開発したキューティクル自動認識処理方法によって、キューティクルの枚数、厚さ、表面におけるエッジの間隔、浮き上がりなどキューティクル形状の全体像を迅速に計測することに成功しました。

これまでキューティクルの観察・計測には、電子顕微鏡などを用いていますが、電子顕微鏡でキューティクルを観察するためには、真空状態という特別な環境が必要でした。それに比べて、レーザー顕微鏡では、水分を含む生活環境の状態でキューティクル形状を計測でき、キューティクル層全体の構造データを一括で得ることでできます。さらに当社の開発したキューティクル自動認識プログラムによって、キューティクル層の様々な部位の数値を極めて迅速かつ簡便に計測することが可能となりました。
この手法を用いて、日本人女性110名から採取した500本以上の毛髪について、室温25℃、湿度60%の環境下で計測を行い、エイジングによるキューティクルの形態変化を調査しました。この実験においては、頭皮付近の毛髪を計測しているため、ヘアカラーなど化学処理の影響はほとんどないものと考えられます。

【結果】

20代と50代以上の毛髪を比較したところ、エイジングによりキューティクルの枚数と厚さ、毛髪表面におけるキューティクルの間隔が減少し、一方、キューティクルの浮き上がりは大きくなる傾向であることが分かりました。また、キューティクル1枚は細長いシート状の形をしていますが、エイジングにより短くなっていることも発見しました。

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毛髪断面とキューティクル構造の模式図


非エイジング毛とエイジング毛におけるキューティクル構造の比較

キューティクル層非エイジング毛エイジング毛変化率有意差
枚数

6.25 ± 1.57

5.07 ± 1.35 -18.9% ***
層の厚さ(μm)

2.93 ± 0.85

2.50 ± 0.81

-14.7

***

エッジの浮き上がり(μm) 0.314 ± 0.047 0.328 ± 0.053 4.5 ***
エッジの間隔(μm) 6.77 ± 0.90 6.53 ± 1.01 3.5 **
角度(°) 3.38 ± 1.02 3.82 ± 1.25 13.0 ***
1枚の厚さ(μm) 0.47 ± 0.11 0.49 ± 0.10 4.3 *
1枚の長さ(μm) 59.2 ± 19.1 46.5 ± 15.8 -21.5 ***

※ *: p<0.05, **: p<0.01, ***: p<0.001 (すべての項目で有意差あり)

【今後の展開】

こういったキューティクルの形状変化は髪質に大きく影響していると考えられ、その特性を考慮したヘアケア商品の開発に応用できると考えております。また、ヘアカラーリングにおいてキューティクルは染料の浸透経路だけでなく、染着部位としても重要な役割を担っていることを当社で明らかにしており※2、こういったキューティクルの形状変化が染毛性に及ぼす影響を調査し、ヘアカラーやヘアケア商品に応用していく予定です。

※2 第32回および第35回日本香粧品学会にて毛髪のキューティクル層におけるヘアカラーの染毛メカニズムを発表。
  第61回日本化粧品技術者会研究討論会にてその応用技術を発表。